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足あと


 

ある日男は夢を見た

浜辺を神と共に歩いている夢を

 

海の向こうの大空に

男の今までの人生の光景が

はっきりと映しだされ

どの光景の前にも浜辺を歩いている

神と男の二組の足あとがあった

 

最後の光景まできたとき

ふり返って見ると ところどころ

足あとがひとつしかないことに男は気づいた

 

そしてそれはいつも彼が境に落ちて

悲しみに打ちひしがれている時だった

 

男は敢えて神に尋ねた

 

「いつもそばにいると約束されたのに

 どうしてわたしを見放されたのですか」

 

神は答えた

 

「わたしの大切ないとしい子よ

 わたしは決して

 おまえのそばを離れたことはない

 あの一つの足あと

 それは

 苦しみや悲しみに傷ついたおまえを

 そっと抱きあげ 歩いた

 私の足あとなのだ」

 

 

 

「足あと」マーガレット・フィッシュバック・パワーズ